VS. in your dreams 2頭の主戦騎手だった、的場均調教師・池添謙一騎手が両馬(グラスワンダー・オルフェーヴル)の想いを語る場VS. in your dreams 2頭の主戦騎手だった、的場均調教師・池添謙一騎手が両馬(グラスワンダー・オルフェーヴル)の想いを語る場

的場均調教師

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実は朝日杯3歳Sを勝って以降、万全の状態で使えたのは安田記念(ハナ差の2着)だけなんです。その安田記念では、道中でアクシデントがあり、僕は危険を避けるために手綱をひかえたのですが、非常に学習能力が高く、僕の指示に従順な馬だったので、ゴーサインと勘違いして瞬時に反応してしまったんです。4コーナーでは、馬自身が間違いに気づいたようでしたが、時すでに遅し。今でもあそこでアクシデントがなければ、ものすごい勝ち方をしてくれただろうな、という思いがあります。不安を抱えながらも素晴らしい結果を出してくれた馬ですが、本当の強さを見せられなかったという悔しい思いが今でも僕の中にありますね。

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そんなグラスの強味が一番発揮されたレースといえば、99年の宝塚記念。ライバルのスペシャルウィークは長くいい脚を使う馬ですから、3コーナーで豊くん(武豊騎手)が動いたときには、「グラス、この展開はきついな」なんて話しかけながら乗っていたのですが、僕の意に反して馬はやる気満々。グッとハミを噛んで、「スペシャルについて行く!」という意志を見せたので、「よし! じゃあ直線で勝負だぞ」とグラスに伝えました。直線に向いたときにはスペシャルを捉えられるという確信がありましたし、実際にアッサリとかわして、そこからも僕が思っていた以上に長くいい脚を使ってくれましたね。

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正直「まいったなぁ」という心境でした。ただ、天皇賞(秋)のスペシャルウィークのレースを見て、宝塚記念とは逆に、今度は僕らをマークする位置で競馬をするだろうという察しはついていました。だから、2カ月前からシミュレーションを始めて、勝つためにはスペシャルに近い位置で競馬をするしかない、と。それでギリギリまで動かず、スペシャルの脚が全開になる前にゴールする、という作戦でした。結果的に、思ったより早めに動く展開になってしまい、最後は「ああ、差されたか…」と思いました(結果は4cm差で勝利)。あのレースはグラスワンダーに助けてもらったレースだと思っています。頭が上がりません(笑)。

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スペシャルウィークについては、僕が上手く豊くんを封じ込めることができれば勝ち切れると思えましたけど、オルフェーヴルは……ハナから白旗をあげたいくらいです(苦笑)。一番印象に残っているのは2012年の凱旋門賞で、十分に勝てるだけの能力を持っていたと思います。ただ、爆発力の裏返しといいますか、ちょっと乗りづらそうな馬というイメージもあります。(逸走した)阪神大賞典でも、池添くん(謙一騎手)が一所懸命我慢させていましたけど、指示に従わずにあれだけムキになってしまうわけですから。

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さらに、スタートしてビューンとハナに行くような馬が内の枠にいないこと。内には後方から行く馬が入るのがベストです。ゲートは普通にオルフェーヴルと一緒に出て、道中は斜め後ろからオルフェを突くような形に持っていきたい。そうやって早めにオルフェの闘志に火をつけて、道中少しでもエキサイトさせることができれば…。グラスワンダーという馬は、一切無駄な動きをしないし、僕の指示に100%従ってくれるので操縦は容易です。とはいえ、相手はオルフェーヴルですから、この作戦が上手くいかなければ早々に白旗を上げることになるでしょうね(苦笑)。

池添謙一騎手

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もちろん嬉しかったことだけではありません。特にダービー以降は、プレッシャーは半端ではなかったです。逸走した阪神大賞典はオルフェーヴルを語る際には外せないレースなんでしょうけど、乗っていた本人としては良い思い出ではまったくないです。あのレースとその次の天皇賞(春)(11着)はショックが大きくて、初めてジョッキーをやめたい、もうGⅠには乗りたくないと思ったほどでした。とはいえ、そのあと宝塚記念に乗せてもらって勝つことができ、ああ、まだこれからも自分は乗っていいんだと思えたんです。そういう意味でも、ジョッキーとして本当に色々な経験をさせてくれた馬でした。

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ダービーだと思います。あんな不良馬場で最後まで伸び続けるというのは、ものすごいスタミナがないとできませんから。逆に弱みは、何をするかわからないところです(笑)。ゴールまで何をするかわかりませんし、ゴールした後でもわからない馬でしたから。だからダービー以降は、ガッツポーズもしたことがないです。最後の有馬記念も、直線は突き放していて絶対に勝てると思いましたけど、考えていたのは、あとは落とされないようにということだけでした。遠足といっしょで、馬から下りるまでが競馬です、というのがオルフェーヴルという馬でしたね(笑)。

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後ろをぴったりくっついていきます。1999年の有馬記念ではスペシャルウィークの武豊さんがそういう競馬をしていますね。オルフェーヴルの場合は、作戦やポジション取りなどではなく、折り合い、走りのリズムを大事にしたいので、自然とそうなるのではないか、ということです。枠順は、内に越したことはないですが、どこでも構いません。ペースも気にしません。実際、1回目の有馬記念はスローペースで瞬発力勝負のレースを、後ろから、外をマクって勝ちましたし、2回目は、他の馬がバテていく中、持ったまま馬なりで進出して圧勝していますからね。どんな流れになっても大丈夫です。

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グラスワンダーのことはわりとファン目線に近い感じで見ていました。いちばん強く印象に残っているのは、自分がデビューする直前、競馬学校にいる最後の年に見た朝日杯3歳Sです。とにかく強いと思いました。グラスワンダーは、有馬記念や宝塚記念といった「グランプリ」に強いと言う方も多いですけど、僕はオールマイティなイメージを持っています。特に距離の部分で、1400m戦でも勝っていますから(1999年京王杯スプリングCなど)、その印象がすごく強いです。あれを見て、どんな条件でも対応できる能力のある馬なんだな、と思いました。

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逆の立場で考えれば、唯一の手は、いろいろな方法でオルフェーヴルの集中を乱すことくらいでしょうか。もしグラスワンダーがそうしてきたら、それはかなり的を射ていると思います。的場さんだけに(笑)。でも結局、負けない自信があります。寄せられても馬力が凄いから弾き飛ばしますし、どんな窮屈な場所でも我慢できますから。馬自身に弱点はありません。あえていえば、乗っている僕を油断させたり、レース前にプレッシャーをかけたりするのがいちばん効果的かもしれないですね(笑)。